2010年4月26日月曜日

私の肩書き

 自分ではあまりこだわっていないし、正直いって「どうだっていい」と思っているようなところもあるのだが、印刷物などに必要とされることがあるので訊かれたり、決めなければならないときがある。
 肩書き。
 職業小説家で生活していた30代のころは、躊躇なく「小説家」もしくは「作家」としていたが、いまはそれだけではない。シナリオや詩も書くし、演出もやる。かといって、脚本家、詩人、演出家でもないと思う。
 演奏もするので、ピアニストかといえば、ピアノ以外の楽器も弾く。シンセサイザーを始めとするキーボードや、それに接続したラップトップ、電子音も使う。即興演奏もするし、作曲もする。ピアニストでもなく、作曲家でもないので、音楽家とひとくくりにしようかと思うこともあるが、やっているのはそれだけじゃない。

 脚本を書き、演出をして、自分も舞台にあがって演奏をやっているというのは、イメージとして一番近いのは「弾き振り」かもしれない。ピアノコンチェルトなどでピアニストが自分も弾きながら、指揮もやってしまうという、あれ。
 有名なところではアシュケナージ、古いところではフルトヴェングラーやブルーノ・ワルター、バーンスタインなんて人もいる。ピアニストだけでなく、ヴァイオリニストやチェリストも弾き振りの人がいたし、モーツァルトやベートーベンの時代ではそういうスタイルは珍しいことではなかったという話も聞いた。

 脚本を書いて演出をする人は多いし、ついでに役者としてステージに立つ人もいるが、演奏家としてステージにいる人はあまり多くないだろう。
 去年の名古屋「Kenji」の公演のときにいわれたことだが、ステージに演出家がずっといるというのは、出演者としては心強いものらしい。なにかハプニングがあっても、演奏で引き受けることができるし、また実際にそういう場面はこれまでに多々あった。
 こういう立場の人間は、肩書きとしてなんと呼べばいいのか、私にはわからない。しようがないので、最近は「小説家/音楽家/演出家」と並べて書いているのだが、どれも「家」がついてご立派な肩書きがさらに並んでしまうので、非常に気恥ずかしい。
 だれかわかりやすくて恥ずかしくない肩書きをかんがえてください。