2011年10月26日水曜日

コミュニケーション能力は身体から作る

 就職や結婚、仕事、家庭、あらゆる場面における人々のもっとも大事な能力は「コミュニケーション能力」である、というアンケート調査の結果があります。
 まあ、そのとおりでしょう。
 人は社会的生き物ですから、人との関わりのなかに生まれ、生きていきます。
 このコミュニケーション能力に著しい齟齬が生じているのが、現代社会といえます。会社や家庭、学校などで、まったく人間関係のトラブルに巻きこまれたことのない人などいないでしょう。人と人がいっしょになにかやるとき、そこには必ずなんらかの軋轢や利害のぶつかりが生まれます。それは当然のことなのですが、それをどうやって乗り越えながら、平和で心穏やかに関わりつづけていけるか、というところにポイントがあります。
 世の中にはたくさんのコミュニケーション・セミナーがあります。話し方教室やプレゼンテーションのスキルアップ講座なども、その一種といってもいいでしょう。どの講座やセミナーも、熟練者によって秘策が練られ、有益なものだと思いますが、あまり「身体性」というものに注目したものは多くないようです。
 私がおこなっている音読ケアや音声表現者の個人セッションは、すべて「身体性」を再重要視しています。人はだれかと言葉を交わすとき、文字情報だけを交換しているわけではありません。その言葉がどのように発されているのか、言葉を発している相手がどのような状態であるのか、呼吸、姿勢、表情など、音声と同時に大量の身体情報を受け取っているのです。この部分をおろそかにしては良質なコミュニケーションを考えることはできません。
 呼吸、マインドフルネス、身体と声の結びつき、こういったことにフォーカスしてコミュニケーションの練習をしてもらうと、驚くほど劇的な変化が起こる人もいます。たとえば最近では「自分の声を注意して聴くようになって(こういう練習もあるのです)怒りっぽさがなくなり、生活が穏やかになった」という報告を聞いて、うれしくなりました。
 自分の呼吸、声、そして身体にまず目を向け、「いまここ」の自分自身にマインドフルであること。たったこれだけのことが、コミュニケーション能力やプレゼンテーション・スキルの大きな向上をもたらします。これができる人は、わざわざ私のところに来るまでもありません。