2012年10月24日水曜日

即興演奏法(3)

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調は一般的な西洋音楽の場合、12諧調ある。
現代日本人も生まれたときから西洋音楽に慣れ親しんでいるので、1オクターブが12音に分割されている12諧調がなじみ深いだろう。現にピアノの鍵盤は、1オクターブの間に白鍵黒鍵とりまぜて12個ある。

ピアノの場合、話はシンプルで、1オクターブという音高の差を単純に数学的に12分割し振り分けている。非常に不自然な音階なのだが、こうしなければならない理由もある。このあたりは「音律」の話になり、音楽というよりむしろ物理のほうに近くなるので、ここでは解説しない。
12諧調は以下のようにならんでいる。一般的日本式(もとはイタリア式)、西洋式、日本の音楽教育で使われている方法の3つで記述しておく。

 ド ド♯ レ レ♯ ミ ファ ファ♯ ソ ソ♯ ラ ラ♯ シ (ド)
   レ♭   ミ♭      ソ♭    ラ♭   シ♭

 C C♯ D D♯ E F  F♯  G G♯ A A♯ B (C)
   D♭   E♭      G♭    A♭   B♭

 ハ 嬰ハ ニ 嬰ニ ホ へ  嬰へ  ト 嬰ト イ 嬰イ ロ (ハ)
   変ニ   変ホ      変ト    変イ   変ロ

上下に並んでいるのは同じ音である。
♯」や「♭」がついているのはピアノでいえば黒鍵の部分だが、「C♯」「D♭」のように2種類の表記法がある。同じ音である。
もうひとつ、日本の音楽教育では「ハニホヘトイロハ」式の表記法がある。「ハ長調」のように。

さて、調性の話にもどろう。
通常、西洋音楽で「C調」、日本式でいえば「ハ調」といえば、鍵盤の「ド」から始まる「7つの音からなる音階」で成り立っている音曲を表す。たとえば、次のように。

 ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド

ことわっておくが、これは長調の場合だ。つまり「ハ長調」。西洋式でいえば「Key of C Major」となる。
ピアノではたまたま白鍵を順番に一個ずつ弾いているように思えるが、注意しなければならないことがある。それは、白鍵の間に「不規則に」黒鍵がはさみこまれている、ということだ。つまり、音の並びは「全音」だったり「半音」だったりして、不規則なのだ。
上記の音階だとこうなっている。

 ド(全音)レ(全音)ミ(半音)ファ(全音)ソ(全音)ラ(全音)シ(半音)ド

つまり、ドから始まって「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」と積み重ねて1オクターブ上のドに至る音階が、ハ長調の音階というわけだ。このならびのなかにある音を使っているかぎり、「ハ長調」という「調性」を感じられる。
この音階にない音を使うと、「調性」が崩れる、ということになる。
「変ロ長調」の場合だと、ミ♭から始まる「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」というならびの音階が、この調性ということになる。

 ミ♭ ファ ソ ラ♭ シ♭ ド レ ミ♭

このように、12種類の音すべてに対し、それぞれの音階を並べることができる。すなわち、西洋音楽の長調に限っていえば、12種類の調性があることになる。
同じ音のならびだから、どの調で演奏しても、移調しさえすれば曲はおなじになる……はずなのだが、実際にはそうならないところがやっかいであり、おもしろいことでもある。即興演奏家にとって、この「調が変化することによって同じ曲でも雰囲気が変わる」ことが、利用価値の高いファクターなのだ。