2013年9月22日日曜日

読むとき噛んでしまうことについて(1)

オーディオブックリーダー養成講座を受講中の方からつぎのような質問が来た。
「意識しすぎるからなのか、まだまだトレーニングが足りないからなのか、その両方なのか、いざ自分で本番と決めて通し読みをすると、どうしても最後まで一度も噛まずに読めたことがありません。今やっている司会の仕事の方も、絶対噛んじゃいけないと意識していればしている時ほど噛んでしまいます。こういうのは、やはり練習なのでしょうか? 実際緊張をすごくするというわけでもないのですが、なかなか上手くいきません。何か対処方があれば知りたいです」

まずいいたいのは、私たちは人間であってロボットではないのだから、かならず間違ったりミスをおかすことがある、ということだ。
朗読にしても司会にしても、「間違ったらどうしよう、噛まないようにしなきゃ」とかんがえながら行なうのと、「間違えることもあるよね、噛むこともあるかもね」と自分がミスすることを受容しながら行なうのとでは、どうちがうだろうか。

いうまでもなく、前者の身体には不要な緊張が生じている。
「噛まないようにしようとすればするほど噛んでしまう」
という現象はそのために起こる、いわば必然といっていい。
後者には不要な緊張はない。
結果的に噛みにくくなる。
自分にミスすることを許せば、ミスは少なくなるのだ。

私たちは「ミスをしないように気をつける」という教育を受けてきた。
それはすべての場面において無効だとはいわないが、そのマインドが人の能力を低下させることがある以上、その考え方を手放すことも必要だ。
「人はミスをするもの。自分もミスをする。そのことを受け入れ、ミスしたときにどのように対処すればいいのか準備しておく」
オーディオブック収録のときに間違えたら、とめてとりなおせばいいのだ。
司会のときも間違えたら、そのことをごまかさず、とりつくろわず、正直にふるまえばいい。
正直な人を相手にするとき、たいていの人は相手を受け入れるものだ。

もっとも、噛まない、読み違いをしないための技術訓練方法がないわけではない。
それについては項をあらためる。