2016年1月29日金曜日

映画:セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター

渋谷アップリンクで上映中の映画「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」を観てきた。
「パリ=テキサス」「ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ」や「ピナ」の監督のヴィム・ヴェンダースと、サルガドの息子のジュリアーノ・リベイロ・サルガドの共同監督作品で、写真家のセバスチャン・サルガドの作品と活動を追ったドキュメンター映画だ。

これを観に行く気になったのは、TEDでサルガドが自分の活動について話しているみじかいスピーチを観たからだ。
それはこちらから観れる。
⇒ https://youtu.be/LTkl1ExPapw

これを観て私は、ひとりの人間が「フォトグラファー」という立ち位置のもとに、社会問題にたいして考えうる最大限の影響力を持つにいたる可能性にわくわくするのを感じた。
サルガドという人物がフォトグラファーという職業を超えて世界を変えていくさまに驚愕した。

もちろん私にはそこまでの力はないけれど、方向性としては自分がそれを望んでいたことに気づいた。
つまり、私は「小説家/音楽家」という明確な立ち位置で、自分がいずれいなくなるこの世界にたいして、すこしでも「自分がいたことで変わった」というものを残したではないか、という手応えをもとめているのではないか、ということだ。

そんな話を人にしていたら、いままさにアップリンクで映画が上映されていることを教えてもらった。
すぐに行って、観た。

セバスチャン・サルガドはジャーナリスティックな仕事からスタートして、人間の置かれている厳しい状況、過剰さ、暴力、欲望、飢餓、貧困などを、世界中を旅しながら写しとっていった。
それを妻が支え、展覧会や写真集が生まれ、仕事が社会的な影響力を持っていった。

少数民族、働く人々、戦争、紛争、飢饉、虐殺、そういったものを写しとる仕事のあとに、サルガドは心身を病み、故郷の地で森の再生を家族とともに試みはじめる。
「ジェネシス」という地球と生命と、人類の原初的な姿を写すプロジェクトがスタートし、森が復活していく。

老いた彼は、しかし、この復活した森をあとにして、自分の物語を完結させることができる。
壮絶で、激しいが、幸福な人生だろうと思う。

そして私たちは、あるいは私は、彼の仕事から、あるいはこの映画から、なにを感じ、なにを学ぶことができるだろうか。
感じ、学んだことを、明日からの行動に変化として反映させることができるだろうか。
最終的に自分自身が問われる映画なのだろうかと思う。