2016年3月14日月曜日

「沈黙[朗読X音楽]瞑想」2回公演が終了

2016年3月11日。
東日本大震災からちょうど5年めの日、明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉のギャラリースペースで、3か月ぶりとなる「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演をおこなった。
今回ははじめて、昼と夜の2回公演だった。

14時前に羽根木の家を出て、明大前までてくてく歩く。
寒い。
真冬にもどったような寒さだが、さいわい、朝方まで降っていた雨はあがった。

14時すぎにキッド・ギャラリーに到着。
ホールスタッフの工藤くんと相談しながら、会場セッティング。
ギャラリーは3階と4階の吹き抜けになっていて、階段で行き来できる。
ピアノは3階にあって、そこに椅子を7、8脚セット。
4階にもおなじくらいの席をセットできるが、手すりから下を見下ろせるような形にならべる。

農大出身のさきちゃんがちょっと早めに来る。
彼女はNVC合宿のIITのときにおこなった「キリンくじ」の当選者で、賞品のひとつとして私が出した「水城を読んでホームコンサートをおこなう権利」を獲得していた。
その権利の代わりとして、この公演に招待させてもらった。
結果的にとてもおもしろがってくれて、夜の公演もつづけて参加してくれたほどで、うれしかった。

コンビニでおにぎり、サンドイッチを買ってきて、かるく食事して、開場。
げろきょゼミ生や共感カフェ参加の方のほかにも、ネット告知で興味を持ってくれた人が来てくれた。

15時、昼の部開演。
ピアノの即興演奏からはいって、すぐに野々宮卯妙の朗読がそれにからむ。
私はこの公演のためにオリジナルの新作テキスト「世界が眠るとき、私は目覚める」を2日前に書きあげたばかりだった。
この作品には新聞配達をする若者の日常からはいって、海、震災、空、星、夜明け、時間を超えることなど、最後は多層的なイメージが含まれている。
読むのはむずかしい作品と思われるが、もちろんそこは野々宮への信頼があって手を抜くことなく書いたものだ。
実際にテキストが音声化され、実体化して予想外のイメージを作りあげていくのを、私は共演しながら楽しむことができた。

沈黙パートではホールの外からのさまざまな音がはいりこんできて、複雑にからまりあった表現空間を作りあげているのがおもしろかった。
それに呼びこまれる形で、私の演奏もいつになく音が多くなり、フロー状態が深くなってゾーンにはいっていくのがはっきりとわかったほどだ。

16時すぎに終演。
お茶とお菓子を出して、みなさんと歓談。
この時間がまた楽しい。

17時にいったん会場を出て、さきちゃん、野々宮と駅前のドトールで休憩。
そのあと、私は個人的に話を聞いてあげたい人と約束をしていたので、駅でその人をピックアップしてドトールにもどり、共感的に話を聞かせてもらう。
みじかい時間だったが、ニーズを聞かせてもらえたし、私がその人になにをしてあげたいのか、なにが必要なのかも明確になった。

18時すぎに会場にもどる。
さきちゃんがもどってきて、iPad Pro とペンシルでお絵描き。
19時すぎ、想さんが早めに来られたので、会場やこのイベントの説明をすこしする。
そのあと、夜の部開場。

夜に部にもゼミ生が何人か来てくれたし、カルメン・マキさんがわざわざ来てくれたり、ひさしぶりに川橋さんのお顔を拝見できたり、先日の想さんのイベントにも参加してくれたカメラマンの伊藤さんや、三木くん、野々宮のつてで朗読を自分のライフワークにすると決めている方が来てくれた。

少人数ではあるが、なんとなく満席に近い感じのなか、20時開演。
さて、今度も私の演奏からはいろうとしたら、野々宮に先を越されて朗読からスタート。
お互い即興なので、昼の部とはまったくちがう展開、音になっていく。

とはいえ、私は昼の部とおなじ試みをやってみた。
ピアノから離れ、手拍子や足踏みで音を出したり、水筒を使って階段の手すりを叩いたり、上り下りしたり。
口笛を吹きながらピアノを弾く、というようなこともやってみた。
楽しかった。
いつものことだが、一番楽しんでいたのは私だったろうと思う。

21時すぎに終演。
ワインとつまみを出して、みなさんと歓談。
マキさんから、
「水城さん、ほんとにピアノを弾いていたの?」
と聞かれたのにはちょっとびっくりした。
どういうことかというと、真っ暗ななかでピアノの演奏が聞こえてきたとき、本当は私は弾いていなくて、あらかじめ録音した演奏を流しているんじゃないかと思ったそうだ。
もちろんそんなことはなく、マキさんも冗談半分でそういうことをおっしゃったのだろう。
私は最大の賛辞と受け取って、うれしかった。

今回の公演では、昼も夜もみなさんからとても好意的なことばを共感的に伝えてもらって、豊かな気持ちになった。
ありのままの正直で無防備な、いきいきとした私たちの生命活動である表現を、そのまま全部受け取ってもらえた感じがして、とても幸せだ。

私自身も自分がいまこの瞬間にいきいきしているものを全部表現しきったという感じがあったけれど、同時になにか特別なことをしたという感じはなく、日常の連続した時間のひと区切りを通過したという、ごくあたりまえな気もしている。

終わってからのぞみさん・野々宮と3人で近くの安い中華料理屋に行って、軽く打ち上げたのだが、隣の席に想さんと伊藤さんがいてびっくりした。
気分よく飲み食いして、また歩いて羽根木の家まで帰った。


「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演@明大前キッドギャラリー(6.18)
ともに深く、ことば、静寂、音、そして空間とご自分の存在そのものをあじわうこと。ご来場いただいたみなさんにある種の「体験」を提供する試みです。14時からと18時からの2回公演。